ピルについてのメリットとデメリットをまとめました。

STD外来

ピルは避妊のために開発された薬です。
正しく服用すれば、最も避妊率の高い避妊法のひとつです。

また、内服により女性ホルモンの作用をコントロールする薬であることから、生理痛をやわらげたり、不正な月経周期を整えたり、出血量を減らしたりなど、避妊以外もさまざまな効用があります。これをプラスの副作用ということで、「副効用」といいます。

一方で、デメリットとなる副作用がないわけではありません。

低用量ピルについて、現在考えられているメリットとデメリットをまとめました。(「OCの仕様に関するガイドライン」参照)

■ピルのメリット・デメリット(がん以外)

メリットとして挙げられるものは頻度が高く、日常的な恩恵を受けやすいものです。デメリットとして挙げられるものは非常に稀であり(後述します)、ほとんどの方にとってはリスクよりもメリットのほうが上回っていると考えます。

■ピル内服とがんのリスクについて

ピル内服とがんとの関係性をまとめたものです。
発見が難しい「卵巣がん」や「子宮体がん」のリスクを大幅に減少します。また、女性のがん死亡の第一位である「大腸がん」のリスクも減少することが明らかになっています。

一方で、乳癌のリスクを上げる「かもしれない」、5年以上内服を継続する場合は子宮頸がんのリスクがやや高くなる、悪性黒色腫(ほくろのがん)のリスクが上がるかもしれない、と言われています。よって、長期間内服する方の場合は、子宮がん検診を受けてもらうようにしています。

リスクが増えるものと減るものが混在しているので一見わかりにくいですが、「リスクが下がるもの」に列挙されているがんのリスクの下げ幅がかなり大きいことに対して、「リスクが上がるもの」に列挙されているがんの発生リスクの上昇が全体的に微量であり、総合的に考えてメリットが大幅に上回ると考えてよいと思います。


■ほとんどの人にとってピルを飲んでも、死亡リスクは上昇しない。

低用量ピルを長期間にを使用したとしても、大部分の女性にとって安全であり、死亡率増加とは関係がないことが明らかとなっています。 


よく言われる静脈血栓塞栓症(血管の中に血の塊ができる病気)のリスクに関してですが、ピルを飲むことで3倍上昇すると言われています。というととても危険なことのように聞こえますが、そもそも静脈血栓塞栓症が健康な女性に起こる確率がものすごく低いのです。

女性10万人当たり年間5例から15例に増加する、ということです。
これは正常妊娠することによって上がるリスクよりも少ないものです。

喫煙者であるとリスクが高いため、35歳以上で喫煙者の方には原則ピルの内服は推奨しない(禁煙する)ことになっています。


同じく、非喫煙者のピル服用による脳梗塞のリスクが2倍増加したという報告がありますが、脳卒中全体(脳梗塞と脳出血を合わせたもの)としてのリスクでは有意な増加を認めず、また出血性および虚血性の脳卒中の死亡率は、OCの使用では増加しないと言われています。いずれにしろ、「極めて小さいリスクだと説明して良い」とガイドラインに記述されています。

同様に、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)に関しても、非喫煙者の心筋梗塞のリスクはピルの使用で増加しないと考えられています。



■デメリットに関する質問と誤解

乳がんについて
乳癌の家族歴の有無にかかわらず、ピルの使用により乳癌リスクが増加する可能性は小さいと言われています。

子宮頸がんについて
5年未満のピルの使用は子宮頸癌リスクを増加させないが、5年以上使用するとリスクが増加します。

性器出血について
ピルの使用によって破綻出血が起こることがあるが、飲み忘れ、嘔吐または他に飲んでいる薬物との相互作用がなければ、様子見で良いと言われています。

体重増加
「ピルを飲むと太る」と言われていましたが、これは「関連なし」と否定されています。

妊孕性(妊娠しやすさ)
「ピルを飲むことで子宮を休め、妊娠しやすくなる」と言われていましたが、これも明らかな関連はないとされています。

頻回の検査について
ピル内服に関して、血液のかたまりやすさなどについて頻回の血液検査をしないといけないとされていましたが、大きなリスクがない方に関しては希望者のみでよいとされています。

多くの産婦人科の先生方が推奨しているように、低用量ピルの内服に関しては基本的にはメリットの方がデメリットを上回るものと考えていますが、ぜひ判断の参考になればと思います。


より詳しい情報が必要な場合はこちらもご参考下さい。

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